【映像クリエイター必見】デュアルISOとは?暗所性能を劇的に高める次世代技術を徹底解説

カメラの豆知識,動画 / by コメットさん /

近年、シネマカメラやプロ仕様のミラーレス一眼カメラのスペック表に登場するようになったキーワード、それが**「デュアルネイティブISO(Dual Native ISO)」あるいは「デュアルベースISO(Dual Base ISO)」**です。

これは単なる高感度性能の向上ではなく、低照度下での映像・写真の質を根本から変える革新的な技術です。

「ISO感度を上げるとノイズが増えるのは仕方がない」という従来の常識を覆し、暗い場所でもノイズを抑え、広いダイナミックレンジを保った映像制作を可能にします。

本記事では、このデュアルISOの仕組みを分かりやすく解説し、それがあなたの撮影、特に夜間や室内でのシネマティックな映像制作に、どのようなメリットをもたらすのかを徹底的に掘り下げます。


はじめに:暗所撮影の悩みを解決する「魔法」の技術

映像制作において、照明のセットアップは時間もコストもかかる作業です。特にドキュメンタリーやゲリラ撮影、自然光を活かしたシネマティックなシーンでは、十分な光量を確保できない場面が多くあります。

従来のカメラで暗い場所を撮ろうとすると、次の二つのトレードオフに直面しました。

  1. ISO感度を上げるノイズが増加し、画質が劣化する。
  2. 照明を増やす手間とコストが増大し、求める雰囲気が出せないことがある。

デュアルISO技術は、この**「ノイズの増加」という根本的な問題を、カメラのセンサー設計そのもの**から解決しようとするものです。それは、まるでカメラが「光を捉えるモード」を二種類持っているようなものなのです。


ステップ1:従来のカメラのISO感度調整の仕組み

デュアルISOの凄さを理解するために、まずは通常のカメラがどのようにISO感度を調整しているのかを簡単に見てみましょう。

従来のISO感度は「増幅」が基本

カメラのセンサー(撮像素子)は、光を電気信号に変えます。この光を電気信号に変える効率が、そのセンサーの**「ベース感度(ネイティブISO)」**、つまり最もノイズが少なく、最もセンサーの性能が引き出せる基準の感度です(例:ISO 100やISO 400)。

通常のカメラでISO感度を上げるとき、センサー自体が光をより多く捉えるわけではありません。代わりに、**センサーから出力された電気信号を、カメラ内部の回路で電気的に増幅(ゲインアップ)**しています。

例えるなら、ラジオのボリュームを上げているのと同じです。音量を上げれば声は大きくなりますが、同時に「ジーッ」というノイズも大きくなってしまいます。この電気的な増幅が、高感度時にノイズ(ザラザラとした画質)が増える主な原因です。


ステップ2:デュアルISO(Dual Native ISO)の仕組みとは?

デュアルネイティブISOは、この「電気的な増幅」に頼るのではなく、センサーの「光を電気信号に変える構造」を二重化することで、低照度下でのノイズ問題を根本的に解消します。

1. 二つの「基本感度(ネイティブISO)」の存在

デュアルISOを搭載したカメラのセンサーには、光を受け取る画素(ピクセル)ごとに、二つの異なるゲイン(利得)設定を持った回路が組み込まれています。これにより、カメラはノイズが最も少ない「ベース感度」を二つ持つことができます。

  • ベースISO 1(低感度ベース):
    • 例:ISO 400
    • 日中や十分な光量がある環境での撮影に適しています。
    • ダイナミックレンジが最も広く、画質がクリアになります。
  • ベースISO 2(高感度ベース):
    • 例:ISO 2500 または ISO 5000
    • 暗所や夜間など、光量が不足している環境での撮影のために設計されています。
    • 低感度時のノイズレベルを維持したまま、効率的に光の信号を取り込むことができます。

2. 高感度ベースISOの「驚きの仕組み」

従来のカメラでISOを400から2500に上げる場合、信号を電気的に増幅するためノイズも約6倍になってしまいます。

一方、デュアルISOカメラでベースISO 2(例:ISO 2500)を選択した場合、カメラは内部でセンサーの配線や回路そのものを切り替えます。これにより、電気的な増幅を最小限に抑えながら、光の信号をより効率的に読み出すことができるのです。

これは、電気信号を無理に持ち上げるのではなく、「暗い場所でも大きな信号を得られる別の設計のセンサーに物理的に切り替える」イメージに近いです。結果として、高ISO感度なのに、低ISO感度と同じくらいのノイズレベルで撮影が可能になります。


ステップ3:デュアルISOがもたらす撮影上のメリット

デュアルISO技術は、特に映像制作における画作りの自由度を大幅に高めてくれます。

1. ノイズの劇的な低減と柔軟なライティング

最大のメリットは、暗所でのノイズが劇的に少なくなることです。

例えば、通常ISO 2500で撮影すればノイズだらけになるようなシーンでも、デュアルISO機能を使えば、まるで日中のISO 400で撮ったかのようにクリーンな映像が得られます。

これにより、高価で大型の照明機材に頼らず、自然光や環境光といった少ない光だけでも、クオリティの高い映像を撮影できるようになります。照明セットアップの時間短縮と、撮影場所の自由度が向上します。

2. ダイナミックレンジの確保

デュアルISOで高感度ベースを使うと、高ISOでも電気的な増幅によるクリッピング(白飛び)が起こりにくくなります。

これは、暗い部分(シャドウ)のノイズが抑えられるだけでなく、明るい部分(ハイライト)の情報も保持されやすくなることを意味します。結果、高ISO時でも広いダイナミックレンジを保つことができ、ポストプロダクション(カラーグレーディング)での自由度が格段に向上します。

3. スローモーション撮影への貢献

動画撮影では、シャッタースピードを速くすると(例:1/200秒)取り込める光量が少なくなり、ISO感度を上げる必要があります。

特にスローモーション(例:120fps)を撮る場合、シャッタースピードは最低でも1/240秒(フレームレートの2倍)が必要となり、光量が大幅に不足します。デュアルISO機能があれば、高感度ベースに切り替えることで、ノイズを気にせずスローモーション撮影が可能になり、表現の幅が広がります。


ステップ4:デュアルISOを実践で活用する際の注意点

デュアルISOの恩恵を最大限に受けるためには、この仕組みを正しく理解して運用する必要があります。

1. ベースISOの切り替えタイミングを意識する

デュアルISOカメラの多くは、低感度ベースISOと高感度ベースISOのどちらを選ぶかを、カメラの設定画面でユーザーが手動で切り替える必要があります。

  • 昼間/明るい場所: ベースISO 1(低感度側)を選択し、最大のダイナミックレンジを確保します。
  • 夕方/夜間/室内: ベースISO 2(高感度側)を選択し、ノイズの少ない高感度性能を優先します。

自動で切り替わるわけではないため、「今、カメラがどのモードで動いているのか」を常に意識することが重要です。

2. 中間感度を選ぶ際の「落とし穴」

例えば、ベースISOがISO 400ISO 2500のカメラがあるとします。

あなたがISO 1000を選んだ場合、カメラは多くの場合、低感度ベース(ISO 400)の回路を使い、電気的に増幅してISO 1000に到達させます。この中間感度は、ベースISOの真の恩恵を受けられず、ノイズが増加しやすいため注意が必要です。

理想的な運用は、可能な限り二つのベースISO(この例ではISO 400とISO 2500)のどちらか、またはその近辺の感度で撮影することです。これが、デュアルISO機材を使いこなすプロの鉄則です。


まとめ:デュアルISOは「表現の自由」を広げる技術

デュアルネイティブISO技術は、単なるスペック競争の結果ではなく、**「光の制約からクリエイターを解放する」**ための技術革新です。

これまでは照明で無理やり光を作り出さなければ得られなかったクリーンな映像を、環境光の美しいムードをそのまま活かしながら撮影することが可能になりました。

特に、ドキュメンタリー、映画、PVなど、シネマティックなルックを追求する映像クリエイターにとって、この機能はもはや必須の機能となりつつあります。

もしあなたが、夜間のノイズや照明のセットアップに悩んでいるのなら、デュアルISOを搭載したカメラへの切り替えは、あなたの映像制作のクオリティと自由度を劇的に向上させる、最も確実な投資となるでしょう。

コメットさん
コメットさん
編集部

写真と映像、ガジェットも好きな人。必死に生きることは目分量。